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07.07
Sat
序章1.忘却の彼方




 自室のベッドに寝転がり雑誌を流し読みしていた私は、唐突に口を開いた彼の方を見ることもなく曖昧な返事をした。
きっと「んー」だの「うー」だったかと思う。よく覚えていない。もう少し言えば読んでいた雑誌の事もよく覚えていない。私は眠たかった。

「仕事辞めました」

「へー」



 数秒後突然部屋のドアが閉まる音が聞こえたので、彼は出ていったのだろう。私はどうしよう、酷く億劫だがシャワーを浴びて寝てしまうことにしよう。

 浴室を出た私はショーツ一枚にバスタオルのままベッドに飛び込んだ。本当は裸一貫で布団に引きこもりたいところだが、初めて彼に見られた時、いつもは温厚といって差し支えない彼が意外にも怒ったので(怒ったといっても怒鳴り散らすというわけではなく、口数が減ったり目立たない愛想が更に控えめになったりといった程度のことだ)せめて下くらいは隠す事にしたのだ。梅雨に入ってもう数週間が経つが、この辺りは梅雨の時期も朝晩は割と冷える。Tシャツの一枚でも着たほうがいいのかもしれないがもう身体が思うように動かない。渾身の一撃で濡れたバスタオルを椅子にぶん投げる。そろそろ本格的に寝入ってしまうのだろうと他人事のように考えながらズルズルとシーツに身体を埋めていく。

 そういえば、なんだったか。

彼はさっき何かを伝えにここに来ていた。部屋の閉まる音だけがおぼろげに記憶に残っている。
閉まる音は静かだったはずだ、多分。そう剣呑な話題ではなかったのだろう。

 彼との生活が始まって、もう一年近くになる。
さっきの「パンツ一枚事件」みたいに、彼はそういう一般的な倫理観を割と尊重するタイプで、控え目で大人しくていかにも気が弱そうな見た目の癖に芯は意外としっかりしている。それとちょっと馬鹿だ。
 会社の同期だった私はその彼のそんなには悪くない見た目に惹かれて何度か食事をした。人間、ご飯を何回か食べればどんな人間か分かるもんで、彼も度々その魅力の片鱗を見せてくれた。

そんなこんなでこうして私は、一人で契約している賃貸アパートに彼をこっそり住まわせているのだった。
もちろん割り勘だ。

 そう、その彼がさっき、私の部屋で何か言ったのだ。なんだっけか。

 仕事、辞める…?

現実感のないその言葉を反芻しているうちに、いよいよ睡魔が本気を出したようで私はあっさり眠りについた。




「未タイトル」

フィクションです。実際の人物関連団体うんたん。

チラ裏的小説もどき始めました。


7/14:タイトル、カテゴリを修正。

7/16:タイトル決定の為修正
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